吃音のある子どもへの
親の接し方と保護者ができるサポート
「どう接したらいい?」「何か言ってはいけないことはある?」吃音のある子どもを持つ保護者のための、具体的なガイドです。場面別の声かけ例・年齢別アドバイス・専門家への相談タイミングまで詳しく解説します。
この記事の内容
- 1.まず知っておいてほしいこと
- 2.研究が示す「親の関わり方」の影響
- 3.日常でできる良い対応
- 4.避けたい言葉・対応
- 5.場面別の声かけ例集
- 6.年齢別の関わり方
- 7.兄弟・姉妹への説明
- 8.子どもの心を守るために
- 9.保護者自身のメンタルケア
- 10.よくある質問(7つ)
1. まず知っておいてほしいこと
吃音は親のせいでも、子どもの努力不足でもありません。遺伝的・神経学的な特性です。 「治す」より「話すことへの恐怖を減らし、自信をつけること」が最も大切な目標です。そしてその最大の支援者は、毎日そばにいる保護者の皆さんです。
2. 研究が示す「親の関わり方」の影響
家庭でのコミュニケーション環境が吃音の経過に影響することが研究で示されています。
高速な話し方
親が早口で話すと、子どもも急いで話そうとし、吃音が増えやすくなります。親がゆっくり話すと子どもも自然にペースを合わせます(Guitar & McCauley, 2010)。
質問の多さ
次々と質問を続けると、子どもは急いで答えようとします。質問は1回したら答えをしっかり待つ習慣が効果的です。
家庭の安心感
「話してもからかわれない」「最後まで待ってもらえる」という安心感が、予期不安を下げ吃音が出にくくなる環境を作ります(Starkweather, 1987)。
📚 Guitar & McCauley (2010). Treatment of stuttering. / Starkweather (1987). Fluency and stuttering.
3. ✅ 日常でできる良い対応
目を見て、ゆっくり聞く
「最後まで聞いてもらえる」という安心感が最も大切です。スマホを置いて、子どもの目を見て話を聞きましょう。沈黙があっても焦らず待ちます。
親自身がゆっくり話す
「ゆっくり話して」と言うより、親がゆっくり話す姿を見せる方が効果的です。子どもは自然にペースを合わせるようになります。家族全員がゆっくり話す雰囲気を作れると理想的です。
話しかけられたらすぐ反応する
「ちょっと待って」「後でね」が多いと、「話しかけていいのかな」という躊躇が生まれます。短くてもいいので応じましょう。「ごめん、今手が離せないから3分後に聞かせて」と具体的に伝えるのも有効です。
「言えた!」ことを自然に認める
流暢さではなく、「話してくれたこと」を認めましょう。大げさに褒めるより「うん、そうなんだ」と普通に受け取ることが大切です。「吃音が出なかった」より「話してくれた」プロセスを評価します。
一緒に楽しく話す時間を作る
食事中・お風呂など、テーマのある会話より「雑談」の時間が吃音の練習に最も効果的です。1日10分でいいので、子どもの話を主役にした時間を意識的に作りましょう。
吃音のことを「普通の話」にする
吃音について家庭で話せる環境を作ることが大切です。「吃音って何?」「なんで詰まるの?」と子どもから聞かれたとき、「話し方の特徴でね、詰まりやすい人がいるんだよ」と自然に答えられると、吃音を隠すものではなく受け入れるものとして子どもに伝わります。
4. ❌ 避けたい言葉・対応
善意からの言葉でも、子どもに「今のままじゃダメ」というメッセージを与えてしまうことがあります。
❌ 「ゆっくり話して」
子どもは既に全力で話しています。「もっとうまく話せるはず」というプレッシャーになります。代わりに、親自身がゆっくり話す姿を見せましょう。
❌ 「深呼吸してから話して」
吃音を「緊張が原因」と誤解させ、「緊張しないようにしなきゃ」という不自然な自己意識を高めます。
❌ 「また、どもってる」と指摘する
指摘されることで話すことへの意識が高まり、余計に吃音が出やすくなります。
❌ 言葉を先取りして補う
「こう言いたいの?」と先に言ってしまうと、「自分では言えない」という無力感につながります。最後まで待ちましょう。
❌ 「学校で発表、大丈夫だった?」と毎回聞く
吃音を常に意識させることが逆効果になることがあります。「楽しかったことは何?」と普通の質問の方が自然です。
❌ 「なんでどもるの」と問い詰める
本人もわかりません。なぜ詰まるかを責めても、吃音は改善しません。「どもっても気にしてないよ」という安心感の方が大切です。
5. 場面別の声かけ例集
実際の場面でどう声をかけるか、具体的な例を示します。「正解」の言葉はありませんが、方向性の参考にしてください。
6. 年齢別の関わり方
2〜5歳(幼児期)
環境づくりと自然回復のサポート
6〜11歳(小学生)
学校との連携と自己肯定感の構築
12歳以上(思春期)
自律性の尊重と自己開示の準備
7. 兄弟・姉妹への説明
きょうだいが無意識に笑ったりまねしたりすることで、吃音のある子どもが深く傷つくことがあります。事前に正直に伝えることが大切です。
説明の例(小学生への伝え方)
「○○はね、話すとき言葉が繰り返されたり、詰まったりすることがあるんだよ。吃音っていってね、生まれつきの話し方の特徴なの。からかったりまねしたりしないでね。ゆっくり待っていてあげてね。」
8. 子どもの心を守るために
「吃音があっても大丈夫」を伝える
吃音があっても素晴らしい人生を送っている人はたくさんいます(吃音のある著名人:バイデン元米大統領、エド・シーラン、桑田佳祐さんなど)。「吃音は個性の一つ」という視点を家庭で育てましょう。
吃音以外の強みを見つける
「話すこと」だけに注目するのではなく、絵が上手い・算数が得意・優しいなどの強みを一緒に見つけましょう。自己肯定感は吃音への対処力にも直結します。
「どんな気持ち?」を聞く習慣
吃音について直接聞かなくても、「今日学校楽しかった?」「嫌なことあった?」と感情を聞く習慣が、子どもが困ったときに話してくれる土台を作ります。
9. 保護者自身のメンタルケア
吃音のある子どもを持つ保護者が、罪悪感・不安・悲しみ・焦りを感じることは自然な反応です。「自分のせいかもしれない」「もっとうまくやれたはず」という思いを抱えている方は少なくありません。
しかし、その不安や焦りは子どもに伝わります。保護者自身が心の余裕を持つことが、子どもへの最大のサポートになります。
10. よくある質問
Q. 吃音のある子どもに「ゆっくり話して」と言ってはいけませんか?
A. 「ゆっくり話して」という言葉は、子どもに「今のままではダメ」というメッセージを伝えてしまうことがあります。子どもは既に全力で話しています。代わりに、親がゆっくり話す姿を見せることが効果的です。
Q. 吃音は親のせいですか?
A. いいえ。吃音は遺伝的要因や脳の言語処理の特性が主な原因とされており、親の育て方が原因ではありません。かつては「親の過度な期待」が原因とされた時代もありましたが、現在の研究ではそのような根拠はないとされています。
Q. 吃音のある子どもの話を聞くとき、何に気をつければよいですか?
A. 目を見てゆっくり聞くこと、話の途中で言葉を補わないこと、急かさないことが大切です。「最後まで聞いてもらえる」という安心感が、話すことへの恐怖を減らします。
Q. いつ言語聴覚士に相談すればいいですか?
A. 次のいずれかに当てはまる場合は早めに相談することをお勧めします。①吃音が6ヶ月以上続く、②吃音が悪化している、③子ども自身が話すことを嫌がる・気にしている、④家族に吃音のある人がいる(遺伝的リスク)、⑤随伴症状(体の動きなど)が強い。早期介入ほど回復率が上がります。
Q. 兄弟・姉妹にどう説明すればいいですか?
A. 「○○は話すとき、言葉が繰り返されたり、詰まったりすることがある。それが吃音っていうんだよ。からかわないで、最後まで待ってあげてね」と正直に伝えるのが一番です。兄弟が笑ったりまねしたりしないよう、事前に説明しておくことが吃音のある子の安全な家庭環境を守ります。
Q. 子どもが「吃音を治したい」と言ったらどうしますか?
A. まず「そう思うんだね」と気持ちを受け止めましょう。その上で「治す練習も、治さないで自分らしく話す方法を見つけることもできるよ」と両方の選択肢を伝えるのが理想的です。「治さなきゃいけない」より「自分に合った話し方を見つける」という視点を育てましょう。言語聴覚士への相談も選択肢として伝えてください。
Q. 親自身が吃音について落ち込んだり罪悪感を感じたりする場合はどうすればいいですか?
A. 吃音のある子どもを持つ親が、罪悪感・不安・悲しみを感じることはごく自然な反応です。ただし、その感情が子どもに伝わることが子どもの不安を高める場合があります。保護者自身も言語聴覚士や心理士への相談、保護者同士のコミュニティ(吃音親の会など)を活用することをお勧めします。
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吃音のある子に「ゆっくり話して」と言ってはいけない理由